研究テーマ

制御工学がどんな分野であるかある程度ご存知の方を対象とした,本研究室の研究テーマの説明のページです.制御工学と周辺分野との関連については こちら もご覧ください.(他大学を含む)他の制御工学関連の研究室と比較して,必要性と学術的興味に応じてより高度な数学や確率・統計・機械学習の知見を積極的に利用しているのが特色です.

方向性

互いに関連するつぎの3つの方向性を軸として,システム制御に関する理論構築及びその実応用に取り組んでいます.

データ駆動モデリング

データからダイナミクスの数理モデルを構築する研究をおこなっており,前PIの片山徹先生の時代から「システム同定」と呼ばれるこの分野をリードしています.また,近年は機械学習分野との融合にも積極的に取り組んでおり(関連する 調査研究会サイト),深層学習をはじめとする統計的学習理論にもとづく様々な手法を取り入れつつ,制御のためのモデルを構築する数理基盤を模索しています.

確率制御理論

実世界においては避けることのできない非決定論的な不確実性のもとでのダイナミクスを対象とする「確率制御理論」と呼ばれる研究分野をリードしています.特に,漠然と数理モデルに確率性を導入するのではなく,統計的学習理論との関係や対象固有の性質(例えば風力発電における突風によるレアイベント)を陽に取り入れた議論や,確率性の有効利用方法に関する研究を展開していることが特徴です.また,量子力学的なダイナミクスの制御に関する研究も実施しています.

ネットワーク化制御

社会システムのように,相互に影響を及ぼしあう多数のサブシステムが総体として適切に機能するダイナミクスを設計する「ネットワーク化制御」と呼ばれる分野をリードしています.中でも,自律分散的な意思決定,限られた通信容量や情報取得,大規模化への対応,などに起因する課題の解決に取り組んでいます.

進行中のテーマ

隠れマルコフモデルのシステム同定

離散変数をもつシステムに対する可制御性・可観測性・テンソル分解にもとづくシステム同定手法に関する研究です.
論文 #モデリング #確率

モデル予測制御のための非線形システム同定

深層学習を用いて非線形を捉えつつ,リアルタイム最適化に耐えうる簡明な構造をもたせるモデリング手法を構築し,トヨタ中央研究所様と共同で実用性に関する検証をおこなっています.
論文 #機械学習 #最適化 #産業応用

ベイズ統計的線形システム同定

線形システム同定の理論を,ベイズ統計の立場から再訪しています.具体的には,事前分布の設定方法や一般化正規直交基底を用いた連続時間システム同定などに取り組んでいます.
論文 #機械学習 #モデリング

ガウス過程回帰状態空間システムの可制御性解析

経路積分の考え方を援用し,ガウス過程回帰により同定されたシステムの可制御性解析手法を提案しています.またモデルスパース化という新しい概念を導入しました.
論文1 論文2 #機械学習 #確率システム

生成システム同定

生成モデル学習の手法を用いて,システム同定の際に状態空間上の重要度や信頼度を同時に与える手法を提案しています.
#機械学習 #モデリング

Mobility as a Service

「モビリティ基盤数理(Advanced Mathematical Science for Mobility Society)」研究ユニット と共同で,カーシェアリングのリバランスに対してスパース最適制御手法を応用しています.
プレプリント #社会システム

制御システムにおけるプライバシー

ネットワーク化制御系における差分プライバシーの特徴づけ・制御性能とプライバシーのトレードオフに関する理論解析をおこなっています.
論文1 論文2 #プライバシー #確率システム

イベント駆動制御系の深層強化学習

深層強化学習を用いて,制御システムの通信量削減に有効なセルフトリガシステムの設計をおこなっています.モデルベースト手法とモデルフリー手法の溝を埋めるためのケーススタディと位置付けています.
#機械学習 #ネットワーク化制御

動的なレアイベントモデリング

ヘビーテイルな雑音を用いたモデリング手法やその応用に取り組んでいます.非ガウス性に起因する確率解析的な困難さをどう回避できるかに注意しています.
記事 解説 論文 #確率システム #モデリング

スパース最適制御理論

スパース性を評価関数にもつ最適制御に関する理論および応用に関する研究をおこなっています.
論文(理論) 論文(応用) #最適化 #確率システム


検討中のテーマ

複雑臓器制御系

ムーンショット目標2 研究開発プロジェクト
「複雑臓器制御系の数理的包括理解と超早期精密医療への挑戦」に参画しています.